医薬品

ハルロピテープの特徴・内服からの切替【ニュープロパッチとの違い】

2019年9月20日に製造販売承認の取得、2019年〇月〇日発売(現在発売延期中)となりました。

パーキンソン病治療薬の貼付剤としては、2013年に発売されたニュープロパッチ以降2つ目の薬剤となりました。

こんな方におすすめ

  • 貼付剤となるメリット・デメリットは?
  • ニュープロパッチとの違いは?
  • 内服薬からの切替方法は?
  • パーキンソン病治療薬の作用機序を忘れてきた…

上記の質問に対して、パーキンソン病の症状・薬剤の作用機序について復習しつつ、ハルロピテープの特徴を説明していきます。

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医薬品情報(基本項目)

販売名ハルロピテープ8㎎/16mg/24mg/32mg/40mg
名前の由来ロピニロールを貼ることから命名
一般名ロピニロール塩酸塩(洋名:Ropinirole Hydrochloride)
製造販売元製造販売:久光製薬 (株)  発売元:協和発酵キリン(株)
薬効分類経皮吸収型 ドパミン作動性パーキンソン病治療剤
効能・効果パーキンソン病
用法・用量ロピニロール塩酸塩として1日1回8mgから始め、必要に応じて1週間以上の間隔で、1日量として8mgずつ増量
1日1回、胸部、腹部、側腹部、大腿部又は上腕部のいずれかに貼付し、24時間毎に貼り替える。
1日量64mgを超えないこと。(※一部省略)
薬価 8mg1枚404.90円
16mg1枚623.00円
24mg1枚801.50円
32mg1枚958.40円 (1日薬価:1916.80円)
40mg1枚1101.00円 
ロピニロールの構造式

パーキンソン病について

パーキンソン病の病態・原因

パーキンソン病とは黒質ドパミン神経の変性脱落によりドパミンの欠乏相対的コリン作動性神経の緊張増加をきたす疾患です。

50歳以上の中高年期に発症しやすく、10万人あたり150人程度発症するといわれています。原因は不明です。

症状は、錐体外路症状(震え・歩行障害)から始まり、①無動振戦筋固縮姿勢反射障害の4徴とする運動症状を呈します。
①無動②振戦③筋固縮を3大主徴と言います。

パーキンソン病の症状まとめ

■原因:黒質ドパミン神経の変性脱落によるドパミンの欠乏と相対的コリン作動性神経の緊張増加

■症状(運動症状)

無動:動作の開始に時間がかかり、ゆっくりしかうごけない

振戦:手足が振るえる(特に安静時)

筋固縮:カクカクした動きとなる

姿勢反射障害:突進歩行やすくみ足が生じる

パーキンソン病の治療薬

ドパミンの欠乏と相対的コリン作動性神経の緊張増加ってどういうこと?

複雑だよね。図を使って見ていきましょう

パーキンソン病が起こるメカニズム正常な黒質ー線条体系
正常な黒質ー線条体系

これが正常な脳内の黒質ー線条体系です。

ドパミンにより、コリン作動性神経が刺激され、適度にGABA作動性神経の放出がコントロールされています。

 

しかし、パーキンソン病の患者さんでは、①ドパミンの欠乏と②相対的コリン作動性神経の緊張増加が起こります。

パーキンソン病が起こるメカニズムパミンの欠乏によるGABA作動性神経の亢進
ドパミンの欠乏によるGABA作動性神経の亢進

ドパミンが減少することで、コリン作動性神経のD2受容体への刺激が減ります。

その結果、アセチルコリンが放出され続け、GABA作動性神経が亢進されGABAが出続けます

そのため、「いざ、動こうとする」とGABAが増加しているため、「体が動かず」ガチガチな動きとなる振戦や、筋固縮や無動が生じます。

簡単に言いますと、脳の命令と体の準備が一致してないため、動きが悪くなります。

思い出しました!ばっちりです。

あとは、簡単ですね。

パーキンソン病の症状を改善するために、ドパミンの補充、ドパミン受容体刺激薬(D2)の投与が行われます。(今回は、ここに焦点を絞ります)

D2を刺激することで、不足しているドパミンの働きを助け、パーキンソン症状を改善します。

ハルロピテープ(ロピニロール)は、②ドパミン受容体(D2)刺激薬の薬剤となります。

パーキンソン病の病態の復習はここで終わりです。

ハルロピテープの特徴【 メリット・デメリット 】 

開発の背景・理由

日本では、2006年にロピニロール塩酸塩錠として発売されましたが、半減期(t1/2)が約5時間で1日3回の投与が必要でした。
また0.75mg/日より投与開始し、1週ごとの増量を経て、最小維持量(3.0mg/日)に到達するまで4週間必要です。
このような問題を解決する製剤として、2012年ロピニロール塩酸塩徐放錠(レキップ錠CR)が発売されました。1日1回投与(2.0mg/日)、2週間で最小維持量(4.0mg/日)に到達します。

現在、日本で承認されているパーキンソン病治療薬の多くは経口剤です。
しかし、パーキンソン病患者では摂食・嚥下障害が全体の50~90%に存在し、軽症例であっても約20%で自覚症状を認めることが報告されています。そのため、経口剤の内服が困難な患者さんが非常に多いのが現状です。また、比較的併用薬も多く、総服用薬も多くなりがちであるため、少しでも内服薬を減らしたいと考える患者さんが多いです。

さらに、パーキンソン病では自律神経症状として消化管障害が発生することで経口薬では、影響を受ける可能性があります。

この様に、上記の問題があり、外用薬の投与が求められていました。

メリット・デメリット

貼付剤によるメリット

・経口薬剤数の減少

・経皮吸収型のため、消化管障害の影響を受けない

・家族や介護者が投与でき、使用状況も確認出来る

・手術などにより、経口摂取が出来ない場合も継続可能

・副作用発現時には、剥離することで迅速な対応が可能

・貼付剤に直接日付が書き込める

貼付剤によるデメリット

・貼付部位の皮膚炎症が発生する

・剥がれる(剥がされる)可能性がある

一般的な貼付剤で共通のメリットも多いですが、パーキンソン病患者のための利点も多いですね。

ハルロピテープ(ロピニロール)の作用機序

作用機序:ドパミンD2様受容体を刺激

少し前置きが長くなりましたが、作用機序についてです。

Ⅵ‐2.薬理作用
(1)作用部位・作用機序
ロピニロール塩酸塩はドパミンの構造をもとに創製された非麦角系ドパミンアゴニストであり、ドパミンD2様受容体を刺激することにより抗パーキンソン病作用を示す。

出典元:インタビューフォーム

先程の図で示したように、ドパミン(D2)を刺激する事で、ドパミンの不足を補います。

貼付剤と内服の血中濃度の違い【貼付剤による改善】

貼付剤にすることで、薬剤の持続的な放出が達成できたのでしょうか?

血中濃度を見て確認していきましょう。

(3)臨床試験で確認された血中濃度
1. 単回投与(日本人データ、健康成人)
健康成人男性12例にロピニロール塩酸塩錠を対照として本剤(ロピニロール塩酸塩として1.2及び4.8mg)を3剤3期クロスオーバー試験とし、本剤1.2mg及び4.8mgは24時間胸部に単回投与、対照のロピニロール塩酸塩錠0.25mg1錠は1回食後に経口投与した際の、血漿中ロピニロール濃度の推移を図に、薬物動態パラメータを表に示す。

ハルロピテープの血中濃度

出典元:インタビューフォーム

よく見ると、被験者が健康成人ということもあり、本剤1.2㎎と4.8㎎、ロピニロール0.25㎎とあり、かなり少なめの量となっています。量は少ないですが、動態の流れは似ているので参考程度に見ていきましょう。
内服薬は1日3回投与するため、どうしても山が出来ることが良そうされますが、貼付剤では、24時間付近が頂点となるような血中濃度を通っています。
今回は単回投与ですが、連日投与すると貼付剤は一定の血中濃度をたどることが予想されます。

実際に、インタビューフォームにも、投与開始後48~72時間で定常状態に達するとされています。

臨床試験の成績

インタビューフォームでも示されている結論だけ提示します。

・本剤群のプラセボ群に対する優越性が示された

・本剤群のロピニロール塩酸塩徐放錠群に対する非劣性が示された

内服からの切り替え

内服から貼付剤に切り替える場合は、どのように換算すれば良いのでしょう。
添付文書・インタビューフォームに、治験の段階で使用した切替換算表が出ています。

ハルロピテープの切替換算表
出典元:インタビューフォーム (55ページ試験方法の項目)

注意:試験上記の切り替え換算表を使用しただけで、実臨床では、こちらが適切かどうかは確認が取れておりませんので、治験の段階ではこのような切り替え方法をとったとの参考までにしてください。

企業より正確な返事があれば追記又は修正します。

だいたい、ロピニロール錠の約4倍の貼付剤で切り替えられていることが分かります。

添付文書に沿った注意点【服薬指導ポイント】

警告(非麦角系ドパミンアゴニストによる突発的睡眠等について )

ドパミン受容体作動薬の使用により、前兆のない突発的睡眠及び傾眠等を発現した結果、自動車事故を引き起こした症例が報告されている3637。承認時までの国内臨床試験において突発的睡眠0.7%(5/760例)及び傾眠11.3%(86/760例)の報告もあり、本剤使用中に前兆のない突発的睡眠が発現した場合、極めて重大な事故につながる危険性があることから、警告を設定し、強く注意喚起を行っている。これら副作用が発現する可能性があることを患者によく説明し、本剤使用中には自動車の運転、機械の操作、高所作業等の危険を伴う作業に従事させないよう指導すること。

出典元:添付文書

非麦角系ドパミンアゴニストに多い副作用です。

国内臨床試験では使用開始後8週間までの期間において、悪心が比較的多く報告されている

出典元:インタビューフォーム

ドパミンアゴニストによる副作用として、悪心が比較的多いです。

その他副作用

主な副作用は、適用部位紅斑(16.3%)、適用部位そう痒感(13.6%)、傾眠(11.3%)、悪心(10.5%)、便秘(6.1%)及びジスキネジア(5.7%)等であった。

重大な副作用
1. 突発的睡眠、極度の傾眠
2. 幻覚、妄想、興奮、錯乱、譫妄
3. 悪性症候群(頻度不明)

服薬指導のポイント

・非麦角系ドパミンアゴニストである薬剤のため、副作用で突発的睡眠が発生します。

・「食事中や運動中などに突然入眠する」などの症状は、服用開始直後に発現するとは限らないため、家族・介護者を含めて注意するよう呼びかける必要があります。

・車の運転は行わないように必ず指導が必要です。

・皮膚症状のケアや貼付部位の適切なローテーションを説明しましょう。

ハルロピテープとニュープロパッチの比較

商品名ハルロピテープニュープロパッチ
一般名ロピニロールロチゴチン
承認2019年2013年
適応パーキンソン病パーキンソン病
中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群
用法24時間毎に貼替同様
維持量までの期間初回用量で可能最短2週目~(9㎎)
禁忌妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
過敏症の既往歴のある患者
同様

ほとんど変わりないと思います。ロピニロールは、維持量までの増量が不要ですが、ニュープロパッチは承認が早かったため臨床データが多く、処方制限が無いのが利点ですね。

まとめ

ドパミン受容体(D2)刺激薬のであるハルロピテープ(ロピニロール)について、パーキンソン病の病態の復習も含めて説明させていただきました。

貼付剤にすることで、血中濃度の安定性や利便性が増加しました。既存のニュープロパッチがありますが、パーキンソン病薬の貼付剤は2剤目となり、医師や患者さんにとって選択肢が増えたことで治療の幅が広がりました。

今後は、それぞれの薬剤の良さが分かり使い分けが出来るようになればと感じます。

ハルロピテープ(ロピニロール)についての説明は以上となります。

上記内容はばーくん(BA-KUN )の個人的見解であり、利益相反等も一切ございません。薬剤の使用については、必ず添付文書インタビューフォームを読んで使用してください。治療により受けた不利益の責任はおいかねます。

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