医薬品

トリンテリックス錠(ボルチオキセチン)の作用機序と特徴

2019年9月20日に製造販売承認の取得、2019年●月 ● 日未発売となりました。

新たな作用機序であるトリンテリックス錠(ボルチオキセチン)について病院薬剤師目線から説明します。

海外では、 2013 年に販売が開始され、世界 80 ヵ国以上で使用されています(2019 年 4 月現在)。

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医薬品情報(基本項目)

販売名トリンテリックス錠10mg/20mg
名前の由来精神症状/身体症状/認知機能の3 面に好影響が期待できることから、3 を意味するtri」と、優れた抗うつ薬を意味する「brilliant」、「excellent」から「rint」と「x」を付けて命名された。
一般名ボルチオキセチン臭化水素酸塩 (洋名:Vortioxetine Hydrobromide)
製造販売元武田薬品工業株式会社 (提携:ルンドベック・ジャパン株式会社 )
薬効分類セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節剤
効能・効果うつ病・うつ状態
用法・用量通常、成人にはボルチオキセチンとして10㎎を1日1回経口投与。
なお、患者の状態により1日20㎎を超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて行う。
薬価薬価基準未収載 (2019年10月現在)
トリンテリックス錠(ボルチオキセチン)の構造式

うつ病とは?

別ページ作成予定

トリンテリックス錠(ボルチオキセチン)の作用機序

ボルチオキセチンの位置づけ

ボルチオキセチンは、新規の作用機序を有する抗うつ薬であり、選択的セロトニン再取り込 み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)及びノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)とは異なる分類に属する。

出典元:インタビューフォーム

新しい作用機序となります。また略語の名前がつくのでしょうか。

トリンテリックス錠(ボルチオキセチン)の作用機序

ボルチオキセチンはセロトニン再取り込み阻害作用並びにセロトニン受容体調節作用(5-HT3、5-HT7 及び5-HT1D 受容体アンタゴニスト作用、5-HT1B 受容体部分アゴニスト作用、5-HT1A 受容体アゴニスト作用)を有する。セロトニン再取り込み阻害作用(cIC50=5.4nmol/L)は、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用(cIC50=107nmol/L)やドパミン再取り込み阻害作用(cIC50=1470nmol/L)と比較してより強力である。

出典元:インタビューフォーム

■作用機序

①セロトニン再取り込み阻害作用

②セロトニン受容体調節作用(5-HT3,5-HT7,5-HT1D受容体アンタゴニスト作用、5-HT1B受容体アゴニスト、5-HT1A受容体アゴニスト)

トリンテリックス錠(ボルチオキセチン)の作用機序
出典元:インタビューフォーム

効能・効果

効能・効果に関連する使用上の注意

・24歳以下は、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、リスクとベネフィットを考慮
・選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)及びノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ剤(NaSSA)において、海外で実施された18歳以下の大うつ病性障害患者を対象としたプラセボ対照臨床試験において有効性が確認できなかったとの報告がある。

Point!

・24歳以下は、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加する報告がある

・18歳以下の大うつ病性障害患者では、SSRI,SNRI,NaSSAは有効性が無い報告がある

用法・用量

用法及び用量
通常、成人にはボルチオキセチンとして10㎎を1日1回経口投与する。なお、患者の状態により1日20㎎を超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて行うこと。

<用法・用量に関連する使用上の注意>

(1) 本剤の投与量は必要最小限となるよう、患者ごとに慎重に観察しながら調節すること。

(2) CYP2D6 の阻害作用を有する薬剤を投与中の患者又は遺伝的に CYP2D6 の活性が欠損していることが判明している患者(Poor Metabolizer)では、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、10mg を上限とすることが望ましい。投与に際しては、患者の状態を注意深く観察し、慎重に投与すること。

出典元:添付文書

初回用量から維持量への増量の必要はないため、複雑な用量変更の必要は無い。
しかし、「用法・用量に関連する使用上の注意」に、「(1) 本剤の投与量は必要最小限となるよう、患者ごとに慎重に観察しながら調節すること。」と、なっています。

10㎎にも割線がついていることから、5㎎で初めることも出来そう。ちなみに20㎎も割線がついています。

CYP2D6遺伝子に関連する成績ですが、海外第Ⅰ相薬物相互作用試験(117 試験)で、Bupropion(強力な2D6阻害薬:国内未承認薬)とトリンテリックス錠(ボルチオキセチン)を併用した場合、AUC 及び Cmax が、単独投与時と比較して、約 2.3倍及び約 2.1 倍に増加した結果が出ている。

また、有害事象の発現頻度は、単独投与時(63.3%)と比較して、Bupropion 併用投与時(89.3%)と高くなっている。
健康被験者を対象とした母集団薬物動態解析の結果、トリンテリックス錠(ボルチオキセチン)の血中濃度は、CYP2D6 の遺伝子型及び代謝活性が Extensive Metabolizer の患者と比較して、PM で約 2 倍になることが想定された(IFより)。

以上の事より、PM患者での最高用量は10㎎となっているようです。

禁忌

禁忌

(1) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
(2) モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤(セレギリン塩酸塩、ラサギリンメシル酸塩)を投与中又は投与中止後 14 日間以内の患者(「相互作用」の項参照)

添付文書より

(2)についてです、 トリンテリックスは SERTの阻害作用を有しているため、モノアミン酸化酵素(以下、MAO)阻害剤との併用によりセロトニン症候群が発現する可能性があることから設定されています。

セロトニン症候群とは?

セロトニン症候群の臨床症状は、軽症から重症にまでおよびます。

軽症例では頻脈、発汗、散瞳、間歇的な振戦・ミオクローヌス、精神症状の変化等がみられ、発熱はないか軽度。中等度以上の症例になると、腱反射亢進、持続的なミオクローヌス・振戦に筋強剛が加わり、発熱も 40℃近くになる。予後を左右するのは発熱で、40℃以上の高熱が持続する場合は、横紋筋融解症、腎不全、播種性血管内凝固等の併発 の可能性が高くなり、死亡に至る場合もある。

慎重投与の理由

1.慎重投与

          (略)

⑹出血傾向又は出血性素因のある患者
⑺緑内障又は眼内圧亢進の患者

出典元:添付文書

⑹出血傾向又は出血性素因のある患者

 SSRI は SERT 阻害作用を介して血小板凝集を抑制し、出血傾向を示す可能性が報告されています。

ボルチオキセチンは、SERTの阻害作用を有するため、作用機序の観点(※下破線参照)から出血傾向を示す可能性が考えられることから設定されています。
臨床試験では、転帰が死亡である 2 例のうち、20mg 群で、本剤との関連が否定されたくも膜下出血が 1 例、関連が否定されなかった脳出血が 1 例報告されています。

また、海外製造販売後において、出血に関連する有害事象(重篤例を含む)が報告されています。

■SERT阻害による血小板凝集抑制の作用機序について

セロトニン及び SERTは、血小板凝集に関与していることが知られている。

何らかの原因により血管内皮が傷害されると、血小板の血管壁への接着や凝集が促進され血小板血栓が形成される。血小板からのセロトニン放出及びそれに続く血管壁や血小板に発現する 5-HT2A 受容体にセロトニンが作用することが血小板凝集の過程において重要であることが報告されている。

SERTが阻害されると血小板内のセロトニン欠乏及びセロトニン放出障害が引き起こされることから血小板凝集を抑制すると考えられている。

⑺緑内障又は眼内圧亢進の患者

SSRI・SNRIではセロトニンによる散瞳作用により隅角が閉塞するために、急激に眼圧が上昇する急性緑内障発作を発現する可能性があります。

血小板凝集抑制作用と同様に、ボルチオキセチンは SERT阻害作用を有するため、作用機序の観点から緑内障又は眼内圧亢進の患者では症状を悪化させるおそれがあることから設定されています。

■閉塞隅角緑内障及び SERT 阻害による眼圧上昇の機序について

閉塞隅角緑内障では、隅角閉塞により眼圧が急激に上昇することがあり、これを急性緑内障発作と呼ぶ。

急性緑内障発作では、眼痛、頭痛、吐き気などの自覚症状が出現する。

セロトニン及び SERT阻害作用は、散瞳作用により眼圧を上昇させることで、急性緑内障発作に関与すると考えられている。

虹彩に存在する 5-HT7受容体にセロトニンが作用すると、瞳孔括約筋が弛緩し、散瞳を引き起こす。解剖学的に隅角が狭い人(狭隅角)では、瞳孔の虹彩と水晶体との間も非常に狭くなっており、散瞳すると虹彩と水晶体の接触部分が増えるため、虹彩の間を通り、瞳孔をくぐって前房に入る房水の流れが遮断される。すると、毛様体から分泌され続ける房水の圧力により、隅角が閉塞される。これにより房水が排出されず、眼圧が上昇する。

このように、SERT 阻害作用は散瞳作用により隅角を閉塞し、眼圧を上昇させると考えられている。

副作用

大うつ病性障害患者を対象とした国内臨床試験及び国際共同試験において、1,050 例(うち日本人708 例)中、499 例(47.5%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められ、主な副作用は、19.0%、傾眠6.0%、頭痛5.7%です。

なお、重大な副作用として、セロトニン症候群、痙攣、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があげれれます。

相互作用【併用禁忌】

■MAO阻害剤

・セレギリン塩酸塩(エフピー®)

・ラサギリンメシル酸塩(アジレクト®)

併用禁忌は2剤があげれられています。

14日間の理由は、下記に示すように、MAO-Bの活性回復とボルチオキセチンの半減期の5倍に基づいています。

非可逆的選択的 MAO-B 阻害剤であるセレギリン塩酸塩及びラサギリンメシル酸塩により阻害された MAO-B 活性が回復するまでの期間に基づき、MAO 阻害剤の投与中止後に本剤を投与する際には、14 日間以内を併用禁忌とした。また、本剤投与後に MAO 阻害剤を投与する際は、本剤の見かけの終末消失相の消失半減期(約 66 時間)の少なくとも 5 倍の期間として、14 日間以上の間隔をあける必要がある。

出典元:インタビューフォーム

臨床成績【 国内第Ⅲ相二重盲検比較試験(CCT-004 試験 ) 】

国内第Ⅲ相二重盲検比較試験(CCT-004 試験)を抜粋します。

ボルチオキセチン 20mg 群とプラセボ群間の p 値は 0.0023[有意水準:2.5%]、ボルチオキセチン 10mg 群とプラセボ群間の p 値は p=0.0080[有意水準:5%]であったため、ボルチオキセチン 10mg 群及び 20mg 群のプラセボ群に対する優越性が検証されています。

まとめ

既存の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)及びノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)とは異なる新たな作用機序を持つトリンテリックス錠(ボルチオキセチン)について、個人的な観点からまとめさせていただきました。

トリンテリックス錠(ボルチオキセチン)についての説明は以上となります。

上記内容はばーくん(BA-KUN )の個人的見解であり、利益相反等も一切ございません。薬剤の使用については、必ず添付文書インタビューフォームを読んで使用してください。治療により受けた不利益の責任はおいかねます。

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