医薬品

ラスビック錠(ラスクフロキサシン)の特徴【肝機能に注意!】

2019年9月20日に製造販売承認の取得、2020年1月8日発売となりました。

新しいニューキノロン系抗菌薬であるラスビック錠(ラスクフロキサシン)について、病院薬剤師目線から説明します。

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医薬品情報(基本項目)

販売名ラスビック錠75㎎
名前の由来不明
一般名ラスクフロキサシン塩酸塩(洋名:Lascufloxacin Hydrochloride)
製造販売元杏林製薬株式会社
薬効分類キノロン系経口抗菌剤

効能・効果

<適応菌種>          

本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、クレブシエラ属、エンテロバクター属、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、プレボテラ属、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
効能・効果
<適応症> 
咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎
用法・用量1日1回75㎎ 経口投与(成人)
剤形即放性のフィルムコーティング錠
ラスビック錠の画像実物
ラスクフロキサシン構造式
出典元: 添付文書

ラスビック錠(ラスクフロキサシン)の特徴

・低い血中濃度で効果を出すように設計されている(デュアルインヒビター)

・腎機能障害の人にも用量変更不要(肝機能低下時は注意)

・下痢の副作用が少なめ

 

ラスビック錠(ラスクフロキサシン)の作用機序【医療者向け】

ラスビック錠(ラスクフロキサシン)は、新しいニューキノロン系抗菌薬です。

細菌のDNA(デオキシリボ核酸)の複製にかかわる酵素(DNAジャイレース及びトポイソメレースIV)を阻害することにより、細菌の増殖をおさえ、殺菌作用を示します。

両方のキノロン標的酵素を阻害する薬剤なため、耐性菌が生じにくい事が示唆されています。

ラスビック錠(ラスクフロキサシン)の用法・用量

通常、成人には、ラスクフロキサシンとして1回75mgを1日1回経口投与する

出典元:ラスビック錠添付文書

キノロン系抗菌剤は、Cmaxが大きいほど耐性菌の発現を抑制することができるとされており、投与回数を1回・1回投与量を大きくする事が望ましいため、上記の用法用量です。

また、Ⅱ相試験の段階で、75㎎と150㎎の投与群を比較しても、治癒率には変化が無く、副作用が150㎎の方で増加したため、75㎎の用量となっています。

食事の影響【ほとんど無し】

ラスビック錠の食事の影響
ラスビック錠の食事の影響2
出典元:インタビューフォーム

空腹投与Cmax約0.592(μg/mL)であり、食後投与約0.765(μg/mL)であることから、食後投与の方が血中濃度が僅かに高いです

他の薬剤もおおむね食後である事が多いので、一般的な処方は食後投与となると思います。

代謝・排泄について

代謝【CYP3A4による脱シクロプロピル体】

健康成人男性にラスクフロキサシン(錠)75mg及び150mgを単回経口投与したとき、血漿中には主に未変化体が検出され、その他に脱シクロプロピル体が検出された。

ラスビック錠の代謝

(2)代謝に関与する酵素(CYP等)の分子種,寄与率

ラスクフロキサシンは主としてCYP3A4で代謝され、CYP2C8及びCYP3A4に対し時間依存的な阻害作用を示す。

1) CYP阻害作用(in vitro)

ヒト肝ミクロソームを用いてCYP分子種の代謝活性に対するラスクフロキサシンの阻害効果を検討したところ、ラスクフロキサシンはCYP3A4及びCYP2C8を時間依存的に阻害した。

2) CYP誘導作用(in vitro)

ヒト凍結肝細胞を用いて3種のCYP分子種(CYP1A2、CYP2B6及びCYP3A4)に対するラスクフロキサシンのCYP誘導能を評価したところ、ラスクフロキサシンはCYP1A2及びCYP3A4に対して誘導能を有していることが示唆された。

出典元:ラスビック錠インタビューフォーム

上記より、ラスビック錠は、腎排泄ではなく主に肝代謝です。

良く処方されるレボフロキサシンなどは腎機能に合わせて減量を依頼していましたが、肝臓の数値を確認することが必要となりそうです。

排泄

健康成人男性6例にラスクフロキサシン(錠)75mgを単回経口投与したとき、投与後144時間までの未変化体の排泄率は、尿中に8.38%、糞中に16.0%であった。未変化体と脱シクロプロピル体の排泄率の合計は、尿中に39.9%、糞中に24.9%であった。(AMX-T103)

ラスビック錠の排泄

出典元:インタビューフォーム

脱シクロプロピル体には薬効はほとんど薬効は無いとIFに記載がある。代謝と排泄の流れとしては、主に肝臓にてCYP3A4により脱シクロプロピル化され腎臓・糞便の両方から排出される

ラスビック錠の代謝・排泄まとめ

・肝臓でCYP3A4により、脱シクロプロピル化される

・抗菌活性の低い代謝産は、腎臓・糞便の両方から排出される

⇒代謝は肝代謝

禁忌項目(理由について)

1. 本剤の成分又は他のキノロン系抗菌剤に対し過敏症の既往歴のある患者
2. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性
3. 小児等
出典元:ラスビック錠添付文書

禁忌の理由を説明します。

1の過敏症についてはそのままです。

2.妊婦または妊娠している可能性がある人

⇒人での臨床試験データはなく、さらに動物実験(ラット)にて胎児への移行乳汁移行が示されています。

3.小児

⇒小児での使用経験がない。さらに動物実験(若齢イヌ)で関節軟骨障害が認められています。

このような理由により、禁忌が設定されています。妊婦については聞きにくいですが、人への投与はされてないため、確認は必要です。

その他の注意点(疾患・相互作用)

肝機能障害について【特に注意!】

ラスビック錠は肝代謝ということもあり、肝障害の患者は血中濃度があがる可能性があります。

まず正常人の薬物動態パラメータを見てみましょう。

次に、肝機能障害患者です。

Child-Pughスコア中程度以上では、AUClast、半減期(t1/2)に伸びが現れています。

今回は単回投与ですので、例えば7日間の連日投与となれば、血中濃度の増加による副作用発現が懸念されるのは、想像出来ると思ます。

腎機能障害の患者

出典元:インタビューフォーム

ラスビック錠には、腎機能に対して慎重投与がありません

実際に薬物動態のパラメータを見てみると、腎機能が悪いことで、Cmaxや半減期が高い傾向もなく、腎障害患者にも安心して使えそうです。

併用薬との相互作用【相変わらず注意が必要】

Ⅶ.薬物動態に関する項目

2) 併用薬の影響

①制酸剤との併用

健康成人男性9例に乾燥水酸化アルミニウムゲル(1075.2mg)・水酸化マグネシウム(960mg)の配合剤とラスクフロキサシン(錠)75mgを経口併用投与したとき、ラスクフロキサシンのCmax及びAUClastはそれぞれ0.513倍[幾何平均比の90%信頼区間(以下同様):0.446~0.591]及び0.681倍[0.627~0.739]に減少した。

②ファモチジン

健康成人男性9例に、ファモチジン20mgとラスクフロキサシン(錠)75mgを経口併用投与したとき、ラスクフロキサシンのCmax及びAUClastはそれぞれ0.975倍[0.846~1.12]及び0.976倍[0.899~1.06]であり、変化は無かった。

③イトラコナゾールとの併用

健康成人男性5例にイトラコナゾール200mgとラスクフロキサシン(錠)75mgを経口併用投与したとき、ラスクフロキサシンのCmax及びAUClastはそれぞれ1.16倍[0.71~1.64]及び1.46倍[1.08~1.87]に増加した。

④フェロジピンとの併用

健康成人男性12例にフェロジピン2.5mgとラスクフロキサシン(カプセル)200mgを経口併用投与したとき、フェロジピンのCmax及びAUClastはそれぞれ1.15倍[0.96~1.37]及び1.62倍[1.35~1.96]に増加した。

⑤テオフィリンとの併用

健康成人男性6例にテオフィリン200mgとラスクフロキサシン(錠)150mgを経口併用投与したとき、テオフィリンのCmax及びAUC0-10は、1.17倍[1.01~1.35]及び1.18倍[1.02~1.37]に増加した。

⑥モンテルカストとの併用

健康成人男性10例にモンテルカスト5mgとラスクフロキサシン(錠)150mgを経口併用投与したとき、モンテルカストのCmax及びAUClastはそれぞれ1.41倍[1.31~1.51]及び1.94倍[1.83~2.05]に増加した。

⑦メトホルミンとの併用

健康成人男性8例に、メトホルミン250mgとラスクフロキサシン(錠)150mgを経口併用投与したとき、メトホルミンのCmax及びAUClastは、それぞれ1.11倍[1.02~1.22]及び1.12倍[1.03~1.21]であり、変化は無かった。

出典元:インタビューフォーム

マーロックス(乾燥水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム)では、血中濃度が約半分に減少している。あまり併用されることはないと思うが、レボフロキサシンなどと同様に酸化マグネシウムとの併用も避けた方がよさそうです。

その他に記載されている薬剤も、モンテルカスト以外はわずかな変動が見られています。ここに記載されている併用薬が重なるようであれば注意するべきと考えます。

副作用

国内で実施された臨床試験において、531例中62例(11.7%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。主な副作用は、下痢、好酸球数増加各7例(1.3%)、ALT上昇5例(0.9%)であった。(承認時)

重大な副作用
1. ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
2. 白血球減少症(0.19%)
3. 間質性肺炎(0.19%)
4. QT延長、心室頻拍(Torsades de pointesを含む)(頻度不明)
5. 低血糖(頻度不明)
6. 偽膜性大腸炎(頻度不明)
7. アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害(頻度不明)
8. 肝機能障害(頻度不明)
9. 横紋筋融解症(頻度不明)
10. 痙攣(頻度不明)
11. 錯乱、せん妄等の精神症状(頻度不明)
12. 重症筋無力症の悪化(頻度不明)
13. 大動脈瘤、大動脈解離(頻度不明)
その他の副作用

0.5〜2%未満 下痢
0.5%未満 悪心
0.5〜2%未満 好酸球数増加、白血球数減少
0.5%未満 そう痒症、発疹
0.5〜2%未満 ALT上昇、γ-GTP上昇
0.5%未満 AST上昇
0.5%未満 頭痛、血中インスリン増加、尿中蛋白陽性

出典元:インタビューフォーム

大動脈瘤、大動脈解離の理由について

5.重要な基本的注意とその理由
2.重要な基本的注意
大動脈瘤、大動脈解離を引き起こすことがあるので、観察を十分に行うとともに、腹部、胸部又は背部に
痛み等の症状があらわれた場合には直ちに医師の診察を受けるよう患者に指導すること。大動脈瘤又は大
動脈解離を合併している患者、大動脈瘤又は大動脈解離の既往、家族歴若しくはリスク因子を有する患者
では、必要に応じて画像検査の実施も考慮すること。(「慎重投与」、「重大な副作用」の項参照)
(5)大動脈瘤又は大動脈解離を合併している患者、大動脈瘤又は大動脈解離の既往、家族歴若しくはリスク因子(マルファン症候群等)を有する患者

出典元:インタビューフォーム

厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知(平成 31 年 1 月 10 日付)に基づき設定した。
フルオロキノロン系抗菌剤と大動脈瘤及び大動脈解離との関連性を示唆する疫学研究 6-9)及び非臨床試験 10)の文献が報告された。それら複数の疫学研究において一貫した結果が得られている。
なお、承認までの国内臨床試験において、大動脈瘤及び大動脈解離の報告はない。

てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者

キノロン系抗菌剤のクラスエフェクトと考えられ、本剤による発現の可能性は否定できないことから設定した。なお、承認までの国内臨床試験において、てんかん等の痙攣性疾患は報告されていない。

重篤な心疾患(不整脈、虚血性心疾患等)のある患者

健康成人における QT/QTc 評価試験(AMX-T111)において、ラスクフロキサシン 225mg 投与群では QTcF の延長は陰性と判定された。一方、450mg 投与群、750mg 投与群では陽性と判定された。
感染症患者を対象として実施した第Ⅱ相試験(AMX-T201)及び第Ⅲ相試験(AMX-T301、AMX-T302、AMX-T303 及び AMX-T304)のラスクフロキサシン投与群において QTcF 間隔の絶対値が 500ms を超えた症例又は QTcF 間隔の変化量が 60ms を超えた症例が一定数認められている。
キノロン系抗菌剤のクラスエフェクトと考えられ、本剤による発現の可能性は否定できないことから設定した。

出典元:インタビューフォーム

併用注意薬にも、QT延長を引き起こす薬剤との併用に注意が促されています。

ラスビック錠併用注意

重症筋無力症の患者

キノロン系抗菌剤のクラスエフェクトと考えられ、本剤による発現の可能性は否定できないことから設定した。
なお、承認までの国内臨床試験において、重症筋無力症の悪化は報告されていない。
2010 年に米国 FDA は、すべてのフルオロキノロン系抗菌剤に対し、添付文書の重症筋無力症の悪化に関する記載の変更を求めている。

臨床成績について

(7)その他

1) 有効性のまとめ(解析対象集団:PPS及びBPPS、FAS及びMFAS)

国内第Ⅲ相試験

呼吸器感染症患者を対象に、ラスクフロキサシン(錠)75mg 1日1回7日間経口投与したときの有効性及び安全性を検討することを目的として、レボフロキサシン(錠500mg 1日1回7日間経口)を対照とした無作為化二重盲検並行群間比較試験(AMX-T301)及び非盲検非対照試験(AMX-T302)を実施した。臨床効果は以下のとおりであった。

出典元:インタビューフォーム

【服薬指導】投与前の確認事項まとめ

・ラスビック錠や他キノロン系抗菌薬に過敏症はないか

・中等度以上の肝障害はないか

・けいれんの既往はないか

・不整脈、虚血性心疾患等の高度心疾患はないか

・重症筋無力症ではないか

・大動脈瘤や大動脈解離のある人、あった人、血縁に解離があった人ではないか

・高齢ではないか

【まとめ 】ラスビック錠(ラスクフロキサシン)について

新しいニューキノロン系抗菌薬であるラスビック錠(ラスクフロキサシン)について、説明しました。

ラスビック錠(ラスクフロキサシン)についての説明は以上となります。

上記内容はばーくん(BA-KUN )の個人的見解であり、利益相反等も一切ございません。薬剤の使用については、必ず添付文書やインタビューフォームを読んで使用してください。治療により受けた不利益の責任はおいかねます。

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