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3番目の抗VEGF製剤であるベオビュ注(ブロルシズマブ)が3月25日に承認されました。添付文書とインタビューフォーム中心に、病院薬剤師目線から説明します。
こんな方におすすめ
- ベオビュ注(ブロルシズマブ)の作用機序は?
- ベオビュとアイリーア、ルセンティスとの違いは?
医薬品情報(基本項目)
↓ の表は右にスライドします
販売名 | ベオビュ硝子体内注射用キット120mg/mL |
名前の由来 | 「Beautiful」(美しい)+「Vision」(視力、視野、景色)より |
一般名 | ブロルシズマブ(遺伝子組換え) (洋名:Brolucizumab) |
製造販売元 | ノバルティス ファーマ株式会社 |
薬効分類 | 眼科用VEGF阻害剤 |
効能・効果 | 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性 |
用法・用量 | 6mg(0.05mL)を4週ごとに1回、連続3回(導入期)硝子体内投与 その後の維持期においては、通常、12週ごとに1回、硝子体内投与 なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上あけること。 |
機器 | プレフィルドシリンジ |
薬価 | 未定 |
問い合わせ窓口 | ノバルティス ファーマ株式会社 ノバルティスダイレクト |
加齢黄斑変性について【萎縮型・浸潤型】
病態
加齢黄斑変性(AMD:age-related macular degeneration)
原因:加齢に伴う慢性炎症や酸化ストレスによって生じる疾患。遺伝要因も背景にあり。
・萎縮型(dry type):網膜色素上皮や脈絡膜毛細血管の萎縮をきたす
・滲出型(exudative type):脈絡膜由来の新生血管による出血などの滲出性変化をきたす。最終的には瘢痕化し、視力の著明な低下や中心暗点をきたす。
承認されたベオビュ注は、「滲出型AMD」に適応となります。
治療方法
・抗VEGF療法(アイリーア、ルセンティス、デオビュnew!)
・光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)
・ステロイド療法:抗VEGF療法,PDTに加えてトリアムシノロンのテノン嚢下注射を併用する場合がある(トリプル療法)
・硝子体手術
滲出型加齢黄斑変性の第1選択治療は、抗VEGF(vascular endothelial growth factor)療法です。全体の1~2割の症例で十分な治療効果がみられないことがあります。
アイリーア®(アフリベルセプト)はルセンティス®(ラニビズマブ)に比べて滲出性変化の抑制効果が強いですが、血漿中のVEGFレベルを低下させる作用も強いです。
薬価が高いため、既に年間1,000億円以上の医療費が消費されているのです。
定期的な投与が必要なため,患者側・医療者の負担も大きい。
あとは、抗VEGF薬のバイオシミラー治験が続々と進められているよ。
ベオビュ注(ブロルシズマブ)の作用機序・VEGF受容体について
ベオビュ注(ブロルシズマブ) の作用機序【VEGF阻害薬】
さっそく、ベオビュ注IFの原文を見てみましょう。
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)は、分子量が約 26kDa のヒト化一本鎖抗体フラグメント(scFv)で、眼の病的血管新生や血管漏出に重要な役割を果たすVEGF-A を阻害することで、滲出型加齢黄斑変性(nAMD)に対して治療効果を発揮する。VEGF-A 経路のシグナル亢進は眼の病的血管新生や血管透過性亢進を介して網膜浮腫の発症と関連している。ブロルシズマブ(遺伝子組換え)は、VEGF-A のアイソフォーム(VEGF110、VEGF121 及び VEGF165)に対して高い結合親和性を示し、VEGF-A と VEGF 受容体(VEGFR1 及び VEGFR2)の結合を阻害することによって、血管内皮細胞の増殖を抑制し、さらに病的血管新生及び血管透過性の亢進を抑制すると考えられている。
出典元:インタビューフォーム
抗体の基本的な構造は、左の図のような「可変領域」と「定常領域」での構成です。
ブロルシズマブは、独自に作成しているヒト化一本鎖抗体フラグメント(scFv)とVEGF-Aと高い親和性のある相補性決定領域を合わせたものです。
これにより、分子量が約26kDaと小さいながらもVEGFを阻害することが出来ます。
生体内でブロルシズマブは、眼の病的血管新生や血管漏出に重要な役割を果たすVEGF-Aを阻害することで、滲出型加齢黄斑変性に対して治療効果を発揮します。
ポイント
・ブロルシズマブは、ヒト化一本鎖抗体フラグメント(scFv)
・ブロルシズマブは、分子量が約26kDaと既存の抗VEGF薬に比べて小さい
⇒既存薬と比較して高モル濃度で投与可能
・VEGF-A経路のシグナル亢進は、眼の病的血管新生や血管透過性亢進を介して網膜浮腫の発症と関連
・VEGF-Aを阻害することで、目の病的血管新生や血管透過性を抑制する
次に、実際どれぐらい分子量が小さいのか、ルセンティス®(ラニビズマブ)とアイリーア®(アフリベルセプト)と比較してみましょう。
ラニビズマブも分子量は48kDaと小さいですが、ブロルシズマブの方が小さいですね。
インタビューフォーム上は半減期も同程度と載っていますが、ブロルシズマブが一番半減期は短いですね。効果持続時間が半減期と相関しているかは分かりませんが、用法的にはオデビュ注が一番投与間隔が少ないですね。
用法用量【維持期は12週毎(8週間以上空ける)】
次に、用量について説明です。
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)として6mgを4週ごとに1回、連続3回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、通常、12週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上あけること。
出典元:添付文書
抗VEGF薬には、「導入期」と「維持期」があります。
ポイント
・導入期:初期に一定の間隔・回数での投与を行う時期
・維持期:眼の状態をDr.が見て、必要に応じて薬剤を使用する
つまり、week1,5,9に投与(固定)し、以降は基本的には3カ月に1回の投与となります(最低でも8週間は間隔をあける)。
ルセンティス:1か月毎に計3回投与。以降は最低1か月以上空けて、必要時に投与
アイリーア:1か月毎に計3回投与。通常2か月毎に投与するが、最低1か月以上空けて必要に応じて投与
投与頻度の違い
・導入期:3剤全て同じ
・維持期:①ルセンティス(最低1か月以上空ける)
②アイリーア(最低1か月以上空ける)、通常2か月毎に投与
③ベオビュ(最低8週以上空ける)、通常12週毎に投与
副作用について
■副作用
眼内炎(0.7%)、眼内炎症(ぶどう膜炎等)(3.2%)、網膜色素上皮裂孔(1.1%)、網膜剥離(0.3%)及び網膜裂孔(0.8%)、並びに網膜動脈閉塞(0.4%)
重篤な副作用:脳卒中(0.1%)心筋虚血(頻度不明)があらわれることがあります。
RMPに記載はありますが、VEGF阻害薬の全身投与(硝子体内投与より高用量)は、VEGF阻害に起因する一酸化窒素やプロスタサイクリンの低下、及びエリスロポエチン産生増加による動脈血栓塞栓事象の発現リスクを高める可能性があることが報告されています。
硝子体内投与されるので、全身循環血中量は非常にわずかですが、潜在的に可能性はありますし、実際に極稀に発生しています。
【 まとめ 】ベオビュ注(ブロルシズマブ)の作用機序と既存薬の違い
ベオビュ注(ブロルシズマブ)について、個人的な観点からまとめさせていただきました。
ポイント
■ベオビュ注(ブロルシズマブ)の作用機序
・ブロルシズマブは、ヒト化一本鎖抗体フラグメント(scFv)
・ブロルシズマブは、分子量が約26kDaと既存の抗VEGF薬に比べて小さい
⇒既存薬と比較して高モル濃度で投与可能
・VEGF-A経路のシグナル亢進は、眼の病的血管新生や血管透過性亢進を介して網膜浮腫の発症と関連
・VEGF-Aを阻害することで、目の病的血管新生や血管透過性を抑制する
■用法用量【維持期は12週毎(8週間以上空ける)】
・導入期:3剤全て同じ
・維持期:①ルセンティス(最低1か月以上空ける)
②アイリーア(最低1か月以上空ける)、通常2か月毎に投与
③ベオビュ(最低8週以上空ける)、通常12週毎に投与
■副作用
眼内炎(0.7%)、眼内炎症(ぶどう膜炎等)(3.2%)、網膜色素上皮裂孔(1.1%)、網膜剥離(0.3%)及び網膜裂孔(0.8%)、並びに網膜動脈閉塞(0.4%)
重篤な副作用:脳卒中(0.1%)心筋虚血(頻度不明)があらわれることがあります。
ベオビュ注(ブロルシズマブ)についての説明は以上となります。
上記内容はばーくん(BA-KUN )の個人的見解であり、利益相反等も一切ございません。薬剤の使用については、必ず添付文書やインタビューフォームを読んで使用してください。治療により受けた不利益の責任はおいかねます。
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