2019年6月18日承認
遺伝子組換えヒト化IgG2/G4モノクローナル抗体であるユルトミリス点滴静注(ラブリズマブ)について説明します。
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医薬品情報(基本項目)
販売名 | ユルトミリス®点滴静注300㎎ |
名前の由来1 | Ultomiris® :ultimate, innovative leap from Soliris |
一般名 | ラブリズマブ(遺伝子組換え) 洋名: Ravulizumab(Genetical Recombination)(JAN) |
製造販売元 | アレクシオンファーマ合同会社 |
薬効分類 | 抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤 |
効能・効果 | 発作性夜間ヘモグロビン尿症 |
用法・用量 | 成人には、ラブリズマブ(遺伝子組換え)として、患者の体重を考慮し、1回2,400〜3,000mgを開始用量とし、初回投与2週後に1回3,000〜3,600mg、以降8週ごとに1回3,000〜3,600mgを点滴静注 |
薬価 | 薬価基準未収載 (2019年8月現在) |
出典元:添付文書、インタビューフォーム
発作性夜間ヘモグロビン尿症とは?
■医療者向け
発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroximal Nocturnal Hemogrobinuria:PNH)は、PIGA遺伝子に後天的変異を持った造血幹細胞がクローン性に拡大した結果、補体による血管内溶血を主徴とする造血幹細胞疾患です。
再生不良性貧血(AA:aplastic anemia)を代表とする造血不全疾患としばしば合併・相互移行します。
血栓症は本邦例ではまれではあるが、PNHに特徴的な合併症です。
■一般の方向け
PNHは赤血球が血管内で異常に早く破壊されておこる貧血で、早朝のヘモグロビン尿(コーラ色)を特徴とします。
血液中の白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する再生不良性貧血という疾患や、できた血球の数が少ないだけでなく、質も悪くなる骨髄異形成という疾患と密接に関係しており、時に合併・相互移行します。
参考:難病情報センター
ユルトミリス点滴静注(ラブリズマブ)の作用機序【医療者向け】
終末補体阻害剤であるラブリズマブは、補体C5に対する親和性が高く、C5に特異的に結合することによってC5a(炎症性アナフィラトキシン)及びC5b[終末補体複合体(C5b-9)の形成を開始するサブユニット]への開裂を阻害する。
また、C5に特異的に結合することにより、終末補体介在性炎症、細胞活性化及び細胞融解に対して拮抗する一方で、微生物のオプソニン化や免疫複合体の除去に不可欠な補体活性化の初期構成成分は保持している。
補体活性化のコントロールが不良なPNH患者においてラブリズマブを使用する治療根拠は、この作用機序に基づいており、PNH患者の補体介在性血管内溶血はラブリズマブの投与によって抑制される。
ラブリズマブは、pH6.0ではC5からの解離及びヒトFcRnとの結合が強化されるよう特異的に設計されている。その結果、ピノサイトーシス後の初期エンドソームの酸性環境下で、抗体とC5複合体の解離が促進する。そのため、遊離抗体が初期エンドソームからFcRnにより血管コンパートメントにリサイクルされ、その結果、ラブリズマブの終末相消失半減期が延長される。出典元:ユルトミリス点滴静注インタビューフォーム
副作用
本剤の発作性夜間ヘモグロビン尿症患者を対象とした臨床試験の222例(日本人症例23例を含む)中87例39.2%に副作用が認められた。主な副作用は頭痛(17.1%)、悪心(3.2%)、発熱(2.7%)、上気道感染(2.7%)、疲労(2.3%)であった。(承認時)
出典元:添付文書より
多い副作用としては、特徴的なものはありませんが、頭痛が高頻度で発現することが報告されています。
また、ユルトミリス点滴静注では、髄膜炎菌感染症の発症が高まる事が懸念されることから、厚生労働省から通知が出ています。
ラブリズマブ(遺伝子組換え)製剤の使用に当たっての留意事項について
使用の際は必ず確認をお願いします。
まとめ
ソリリス®(エクリスマブ)では、一部のPNH患者でC5が十分に阻害されず、ブレイクスルー溶血のリスクや、血栓塞栓事象の発現リスクが高まることが報告されていました。
今回のユルトミリス点滴静注(ラブリズマブ)によって、より多いPNH患者にて効果が期待されています。
ユルトミリス点滴静注について説明は以上となります。
上記内容はばーくん(BA-KUN )の個人的見解であり、利益相反等も一切ございません。薬剤の使用については、必ず添付文書やインタビューフォームを読んで使用してください。治療により受けた不利益の責任はおいかねます。
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