医薬品

デファイテリオ静注200mg (デフィブロチド)の作用機序と副作用

2019年6月18日に希少疾病用医薬品の指定を受け、製造販売承認を取得しました。

ブタ腸粘膜由来のポリデオキシリボヌクレオチド(脱重合したDNA)であるデファイテリオ静注(デフィブロチド)について病院薬剤師の目線から説明していきます。

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医薬品情報(基本項目)

販売名デファイテリオ®静注200mg
名前の由来Defibrotide に由来
一般名デフィブロチドナトリウム(洋名:Defibrotide Sodium)
製造販売元日本新薬株式会社
薬効分類 肝類洞閉塞症候群治療剤
効能・効果 肝類洞閉塞症候群(肝中心静脈閉塞症)
用法・用量通常、デフィブロチドナトリウムとして1回6.25mg/kgを1日4回、2時間かけて静脈内投与する。
薬価薬価未収載  (2019年8月現在)

肝類洞閉塞症候群とは?

肝類洞閉塞症候群(sinusoidal obstruction syndrome:SOS)[別名:肝中心静脈閉塞症(hepatic veno-occlusive disease:VOD) ]は、主に造血幹細胞移植後の合併症の一つで、類洞が血栓によって塞がることで、血流障害が起き、周囲の肝細胞が障害され発症します。

類洞:門脈と肝動脈を流れてきた血液が類洞で合流して混ざり合い、肝静脈に流れていく特殊な毛細血管です。

類洞
出典元:肝機能検査 | 血液検査で分かること – みやけ内科・循環器科 『町医者の家庭の医学』

主な原因は、移植前の化学療法、全身放射線照射、免疫抑制剤にあります。

症状としては、以下があります。
・肝腫大:肝臓が腫れる
・みぞおちの右側部分の痛み(右季肋部痛)
・黄疸:血中ビリルビンの増加により、全身が黄色くなる
・腹水貯留:お腹に水がたまる
・浮腫:非心原性

重症例では、腎臓・肺などの肝臓以外の臓器にも影響を受け、多臓器不全となり亡くなってしまう場合があります。

治療法
軽症 利尿薬投与、水分制限などの対症療法から、支持療法、抗凝固療法、線溶療法を中心とした治療が行われているが、国内ではSOS/VODに対して適応を有する治療薬がありませんでした。

しかし、今回のデファイテリオ静注の承認により治療の幅が広がりました。

(2013 年に欧州で、2016 年に米国で承認され、Jazz Pharmaceuticals 社により日本を除く世界 35 ヵ国で販売されています。)

SOS/VOD発症危険因子、診断基準については、一般社団法人日本造血細胞移植学会に詳しく記載があります。

・SOS/VODの予防について
ウルソデオキシコール酸が予防薬として使われることがありますが、日本と海外で結果に違いがあるなどはっきりと分かっていません。
また、他に、ヘパリン、低分子ヘパリン、プロスタグランジンE1製剤、アンチトロンビン製剤、新鮮凍結血漿を予防として使用される事がありますが、欧米のガイドラインで推奨されているものではありません。

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デファイテリオ®静注(デフィブロチド)の作用機序【医療者向け】

デフィブロチドナトリウムは、ブタ腸粘膜由来の分子量 13000~20000 の一本鎖のポリデオキシリボヌクレオチドのナトリウム塩です。

デフィブロチドの作用機序は明確ではありません。

しかし、in vitro上では、以下6つの効果が認められています。

①アポトーシス抑制作用

②プラスミン活性の増強作用

③組織因子の発現抑制及び組織因子を介した凝固活性の抑制作用

④トロンボモデュリンの発現促進作用

⑤von Willebrand factor(vWF)の抑制作用

⑥組織因子経路インヒビターの遊離促進作用

以上より、

凝固・線溶系の種々の因子に影響を及ぼすことで血管内皮細胞に保護的に働くと考えられています

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用法・用量【重要な基本的注意】

6. 用法及び用量
通常、デフィブロチドナトリウムとして1回6.25mg/kgを1日4回、2時間かけて静脈内投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意
7.1 本剤は、原則6時間ごとに一定の速度で静脈内投与すること。
7.2 本剤の投与は、21日間以上を目安として、肝類洞閉塞症候群の徴候及び症状が回復するまで継続するが、肝類洞閉塞症候群の徴候及び症状並びに本剤投与によるリスクを考慮して継続の可否を慎重に判断すること。[17.1.1 参照],[17.1.2 参照]
8. 重要な基本的注意
8.1 本剤投与前24時間以内は血栓溶解剤(ウロキナーゼ、t-PA製剤)を投与しないこと。
8.2 本剤投与前12時間以内はヘパリン製剤(未分画ヘパリン製剤又は低分子量ヘパリン製剤)を投与しないことが望ましい。
8.3 本剤投与後24時間以内は血栓溶解剤及びヘパリン製剤を投与しないことが望ましい。
8.4 大量出血リスクを伴う外科的手術又は侵襲的手法を施行する患者に対しては、本剤の投与を一時的に中断すること。

出典元:デファイテリオ静注添付文書より

つまり、使用方法については、

用法・用量まとめ
・1回 6.25㎎/kg(2時間かけて静脈内投与)を6時間毎の1日4回
・21日間以上を目安に、肝類洞閉塞症候群の徴候及び症状が回復するまで継続するが、継続の可否は医師判断による

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重要な基本的注意まとめ
・投与24時間:血栓溶解剤(ウロキナーゼ、t-PA製剤)は禁止
・投与12時間:ヘパリン製剤(未分画ヘパリン・低分子量ヘパリン)は投与しないこと推奨
・投与24時間以内は、血栓溶解剤、ヘパリン製剤は投与しないこと推奨

当たり前ですが、大量出血リスクを伴う外科的手術等を実施する場合は、薬剤の投与を中止することが必要です。

調製方法

14. 適用上の注意
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 本剤は、無菌的に調製を行うこと。
14.1.2 本剤は、5%ブドウ糖注射液又は生理食塩液を用いて4 ~20倍希釈すること。
14.1.3 本剤のバイアルは1回使い切りである。残液をその後の投与に使用しないこと。
14.1.4 本剤を希釈した液は、常温で保存する場合には4時間以内冷蔵条件下(2~8℃)で保存する場合には24時間以内に投与を開始すること。
14.2 薬剤投与時の注意
本剤は、独立したラインにて投与するものとし、5%ブドウ糖注射液又は生理食塩液以外の輸液や他の注射液等と同一ラインで投与しないことが望ましい。他剤と連続注入する場合には、本剤の投与前後にラインを5%ブドウ糖注射液又は生理食塩液でフラッシュすることが望ましい。

出典元:デファイテリオ添付文書

調製例:60㎏の成人

6.25㎎/kg*60㎏=375㎎(1回量)

1本200㎎/2.5mL=80㎎/mLより、375mg調製するには、375mg÷80mg/mL=約4.68mL

4~20倍の希釈より、総液量18.7~93.6mLとなる。

そのため、20mLや50mLの5%ブドウ糖、生理食塩水の希釈となります。厳密に希釈を守ると100mLでは薄すぎる場合もありあすが、希釈しすぎの場合の悪影響は更新します。

1日4回投与なので、調製を行う薬剤師や看護師にはかなりの負担になることが予想できます。体重当たりの投与量なので致し方ないです。

調製方法まとめ
5%ブドウ糖液生理食塩液にて、4 ~20倍の範囲で希釈
・常温で保存(4時間以内)、2~8℃で保存(24時間以内)
原則単独ラインから投与。他剤と連続注入する場合は、デファイテリオ注の投与前後に5%ブドウ糖注射液又は生理食塩液でフラッシュ推奨

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代謝・排泄

本剤6.25mg/kgを2時間かけて6時間ごとに4回静脈内投与したとき、重度腎機能障害患者又は末期腎不全患者(6例)の初回投与及び投与4回目のCmaxは健康成人(6例)と比べて約35%~37%上昇し、AUCは約50%~60%増加した。また、重度腎機能障害患者又は末期腎不全患者のt1/2は健康成人と比べて、初回投与及び投与4回目ではそれぞれ1.3倍及び2.3倍延長した(外国人データ)。
血液透析を受けている末期腎不全患者6例に本剤6.25 mg/kgを2時間かけて非血液透析時及び血液透析時に静脈内投与したとき、血液透析によるAUC及び全身クリアランスへの影響は認められなかった

単回静脈投与した場合の排泄率を調べたところ主に尿中排泄されている。そのため、腎機能障害患者では、薬剤の血中濃度がCmaxは35%、AUCは50~60%増加している。

副作用

11. 副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1 重大な副作用
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
初期症状としては、蕁麻疹、嘔吐、血圧低下、虚脱、意識消失等がある。

11.1.2 出血
重篤な出血(脳出血(1.7%)、頭蓋内出血(頻度不明)、くも膜下出血(0.8%)、肺出血(5.8%)、肺胞出血(5.8%)、胃腸出血(4.1%)、血胸(1.7%)等)及び血腫(硬膜下血腫(頻度不明)、脊髄血腫(0.8%)等)があらわれることがある。[1.2 参照],[9.1.1 参照]

11.1.3 低血圧(5.8%)

 

1%以上

1%未満

頻度不明

循環器

 

潮紅

心不全、うっ血性心不全、心筋症、心房粗動、心房細動、洞性徐脈、頻脈、心嚢液貯留、静脈閉塞性疾患、出血性梗塞

血液凝固系

凝血異常

INR増加

播種性血管内凝固(DIC)、APTT延長・短縮、プロトロンビン時間延長

  

耳閉、鼓膜充血

結膜出血

 

霧視、複視

消化器

悪心、嘔吐、下痢

血便排泄、メレナ

腹痛、口腔障害、腹部不快感、出血性食道炎、口内乾燥、便潜血陽性

肝臓

  

静脈閉塞性肝疾患、肝不全、血中ビリルビン異常

代謝異常

  

アシドーシス

筋骨格系

  

四肢痛、筋痙縮

精神神経系

頭痛

嗜眠、硬膜下ヒグローマ

脳症、肝性脳症、可逆性後白質脳症、痙攣、浮動性めまい、不安、平衡障害、協調運動異常、不眠症、激越

腎臓及び尿路系

血尿

 

急性腎障害、出血性膀胱炎、腎不全

呼吸器

鼻出血(8.3%)、呼吸不全、血胸

 

呼吸窮迫、喀血、低酸素症、咳嗽、鼻閉、鼻漏、呼吸音異常

皮膚

発疹、そう痒症

紫斑、全身性そう痒症

剥脱性発疹、紅斑性皮疹、皮膚乾燥、水疱、斑状皮疹

その他

処置後出血(5.0%)、カテーテル留置部位出血

熱感、月経過多

血小板減少症、末梢性浮腫、全身性浮腫、肺感染、発熱、多臓器不全、挫傷、悪寒、疼痛、胸痛、粘膜の炎症、注射部位反応

出典元:デファイテリオ添付文書

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併用禁止薬・相互作用

併用禁忌(併用しないこと)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子

血栓溶解剤

  • ウロキナーゼ
    • ウロナーゼ

t-PA製剤

  • アルテプラーゼ(遺伝子組換え)
    • アクチバシン
      グルトパ
  • モンテプラーゼ(遺伝子組換え)
    • クリアクター

出血の危険性が増大するおそれがある。

マウスの血栓塞栓症モデルにおいて、デフィブロチドナトリウムは組換え型t-PAの抗血栓作用を増強した。

出典元:デファイテリオ添付文書

まとめ

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ブタ腸粘膜由来のポリデオキシリボヌクレオチドであるデファイテリオ静注(デフィブロチド)について説明しました。

デファイテリオ静注について説明は以上となります。

上記内容はばーくん(BA-KUN )の個人的見解であり、利益相反等も一切ございません。薬剤の使用については、必ず添付文書(デファイテリオ)インタビューフォーム(デファイテリオ)を読んで使用してください。治療により受けた不利益の責任はおいかねます。

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