2019年3月26日に製造販売承認の取得、2019年5月24日発売となりました。
ヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤であるスキリージ皮下注(リサンキズマブ)について病院薬剤師目線から説明します。
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医薬品情報(基本項目)
販売名 | スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL |
名前の由来 | 特になし |
一般名 | リサンキズマブ(遺伝子組換え) (洋名:Risankizumab) |
製造販売元 | アッヴィ合同会社 |
薬効分類 | ヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤 |
効能・効果 | 既存治療で効果不十分な下記疾患 尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症 |
用法・用量 | リサンキズマブとして、1回150mgを初回・4週後・以降12週間隔で皮下投与(成人)。患者の状態に応じて1回75mgを投与。 |
薬価 | 239,374円/筒 (2019年9月現在) |
問い合わせ | 医療関係者HP(https://www.abbvie.co.jp) くすり相談室 0120-587-874 |
乾癬とは?
銀白色の鱗屑(皮膚の粉)をともない境界明瞭な盛り上がった紅斑が全身に出ます。乾癬の患者さんの90%位がこの症状です(尋常性乾癬と呼びます)。大きさ、数、形は様々で、発疹が癒合して大きな病変を作ることもあります。できやすい部位は慢性の機械的な刺激を受けやすい頭部、肘・膝、臀部、下腿伸側などです。青壮年期に発症することが多く、多発しますが、通常、内臓を侵すことはありません。かゆみは約50%の患者さんにみられます。爪の変形や関節炎を伴うこともあります。まれに発疹が全身におよぶこともあります(乾癬性紅皮症)。その他、喉が痛んだ後(扁桃腺炎)に雨滴状の小さな乾癬皮疹ができる滴状乾癬、重症の汎発型性膿疱性乾癬があります。
出典元:公益社団法人日本皮膚科学会
乾癬の種類
乾癬は、5つの種類に分類されており、90%が尋常性乾癬です。
尋常性乾癬:ターンオーバーの速度が速いことで、発疹と鱗屑を症状とする
関節症性乾癬:尋常性乾癬の症状に加えて、全身の関節に炎症、こわばり、変形を合併する
膿疱性乾癬:皮膚内無菌性膿疱が生じる
滴状乾癬:水滴程の小型の皮疹が生じる
乾癬性紅皮症:尋常性乾癬に比べて症状が小さい
乾癬についてまとまっているサイトを紹介します。
乾癬ネット(https://www.kansennet.jp/about_disease/syurui/) 乾癬について網羅されているのでオススメです。
乾癬の治療法
②内服療法(飲み薬)
③注射療法(生物学的製剤による治療)
④光線(紫外線)療法
大きく分けると乾癬の治療は4つあります。④光線療法については、詳しくありませんので、①~③について説明していきます。
①外用療法(塗り薬)
活性型ビタミンD3製剤(例:ボンアルファハイ軟膏®、ドボネックス軟膏、オキサロール軟膏)とステロイド外用剤(例:アンテベート軟膏、リンデロンV軟膏)を使用します。
また、血中カルシウム濃度を上げる作用があるため、腎機能低下時や高齢者、脱水時などに広範囲で薬剤を使用する場合は、高カルシウム血症をに注意が必要です。
②内服療法(飲み薬)
・シクロスポリン(ネオーラル®カプセル)
処方例:1日量2.5㎎/kgを1日1~2回に分割。8~12週間内服して中止
・エトレチナート(チガゾン®カプセル)
処方例:1回0.25-0.5㎎/kg 1日2回 適宜増減
・メトトレキサート(リウマトレックス)*適応外
・ネオーラルは、併用薬に注意が必要。グレープフルーツやセントジョーンズワートは避ける必要があり、スタチン系薬剤の血中濃度を上昇させるため特に注意です(ピタバスタチンとロスバスタチンは禁忌)。
③注射療法(生物学的製剤による治療)
乾癬の種類にもよりますが、原則として「他の全身療法を実施したのち、治療効果が得られない、副作用が出現する等」の理由がある場合に適応となります。
また、乾癬における生物学的製剤の使用指針および安全対策マニュアルに記載されているように、生物学的製剤を使用するには、日本皮膚科学会で承認されている施設でなければいけません。
現在使用できる薬剤は下記に示します。薬剤数は近年増えてきています。
・レミケード
・ヒュミラ
・ステラーラ
・トレムフィア
・コセンティクス
・トルツ
・ルミセフ
乾癬の原因
乾癬は、免疫作用として外敵から体を守ってくれるはずのサイトカイン(主にIL-23)が樹状細胞から過剰に産生されることで起こります。
サイトカインにより、リンパ球が炎症を起こす物質(Th17)を生み出し、皮膚や関節で乾癬症状が現れます。
スキリージ皮下注(リサンキズマブ)の作用機序【医療者向け】
リサンキズマブは、ヒトのサイトカインであるインターロイキン(IL)-23のp19サブユニットに結合することで、阻害作用を示す薬剤です。
インタビューフォームを見てみましょう。
リサンキズマブは,ヒトのサイトカインであるインターロイキン(IL)-23 のp19 サブユニットに対するヒト化免疫グロブリン(Ig)G1 モノクローナル抗体であり,IL-23 に対して拮抗的阻害作用を示す
IL-23 の遺伝子多型又はその受容体の遺伝子多型と乾癬及び関節症性乾癬との関連が確認されており,また乾癬の罹患皮膚及び関節症性乾癬患者の滑膜細胞においてIL-23 の過剰発現が報告されていることから,リサンキズマブを用いてIL-23 の活性を阻害することにより,尋常性乾癬,関節症性乾癬,膿疱性乾癬及び乾癬性紅皮症に対する効果が期待される.リサンキズマブはin vitro 試験においてIL-23 に対する特異的結合親和性,IL-23 誘導性のシグナル伝達及び炎症性サイトカイン(IL-17)の産生を抑制した.またマウス耳介炎症モデルを用いたin vivo 試験において腫脹や炎症性サイトカイン産生の抑制作用が認められた.
出典元:スキリージ インタビューフォーム
分かりにくいので、図に表します。
リサンキズマブは、IL-23にあるp19に結合することで、間接的にIL-23受容体との結合を阻害します。
つまり、樹状細胞から産生されたIL-23がリサンキズマブによって、リンパ球に結合することを防ぎます。
それに伴いTh17やTNFαの産生をおさえ、乾癬の症状が改善します。
①リサンキズマブは、サイトカインIL-23のp19サブユニットに結合することで、リンパ球へのIL-23 の阻害作用を示す
②Th17細胞、γδ-T細胞、Treg細胞より産生されるTh17、TNFαが減少する
③Th17やTNFαで起こっていた乾癬の症状が改善する
用法・用量
用法及び用量
通常,成人にはリサンキズマブ(遺伝子組換え)として,1回150mgを初回,4週後,以降12週間隔で皮下投与する.なお,患者の状態に応じて1回75mgを投与することができる.
用法及び用量に関連する使用上の注意
1.投与毎に注射部位を変えること.また,皮膚が敏感な部位,皮膚に異常がある部位,乾癬の部位には注射しないこと(「適用上の注意」の項参照).
2.本剤による治療反応は,通常投与開始から16週以内に得られる.16週以内に治療反応が得られない場合は,本剤の治療計画の継続を慎重に再考すること.出典元:スキリージ添付文書
初回、4週後を注意し、それ以降は12週間隔で投与されます。
16週以内に効果が得られることが分かっており、16週をお越えても改善効果が無ければや薬剤の変更が求められます。
副作用
尋常性乾癬,関節症性乾癬
国内臨床試験(M16-004[1311.38]試験)において,167例中39例(23.4%)に副作用が認められた.主な副作用は,上咽頭炎7 例(4.2%),咽頭炎3 例(1.8%)等であった.
国際共同臨床試験(M16-008[1311.3]試験)において,401例中71例(17.7%)(日本人では39例中12例(30.8%))に副作用が認められた.主な副作用は,ウイルス性上気道感染12例(3.0%),頭痛6 例(1.5%),注射部位紅斑6 例(1.5%)等であった.
国際共同臨床試験(M15-992[1311.4]試験)において,500例中77例(15.4%)(日本人では13例中3例(23.1%))に副作用が認められた.主な副作用は,上気道感染10例(2.0%),ウイルス性上気道感染7 例(1.4%)等であった.
国際共同臨床試験(M16-002[1311.5]試験)において,143例中27例(18.9%)(日本人では11例中1 例(9.1%))に副作用が認められた.主な副作用は,ウイルス性上気道感染7 例(4.9%),注射部位紅斑3 例(2.1%)等であった.
膿疱性乾癬,乾癬性紅皮症
国内臨床試験(M15-988[1311.39]試験)において,膿疱性乾癬患者では8 例中3 例(37.5%)に副作用が認められた.主な副作用は,ウイルス性上気道感染1 例(12.5%),アラニンアミノトランスフェラーゼ増加1 例(12.5%)等であった.
国内臨床試験(M15-988[1311.39]試験)において,乾癬性紅皮症患者では9 例中2 例(22.2%)に副作用が認められた.主な副作用は,ウイルス性気管支炎1 例(11.1%),血中ビリルビン増加1 例(11.1%)であった. (承認時)
⑴重大な副作用
1)重篤な感染症(0.7%):重篤な感染症(敗血症,骨髄炎,腎盂腎炎,細菌性髄膜炎等)があらわれることがあるので,観察を十分に行い,感染症が疑われた場合には適切な処置を行うこと.
2)重篤な過敏症(0.1%):アナフィラキシー等の重篤な過敏症があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には直ちに投与を中止し,適切な処置を行うこと.
⑵その他の副作用
次のような症状があらわれた場合には,症状に応じて適切な処置を行うこと.
5 %以上1 ~ 5 %未満1 %未満
感染症及び寄生虫症、上気道感染白癬感染毛包炎、神経系障害頭痛
全身障害及び投与局所様態、注射部位反応(紅斑,腫脹,そう痒感,疼痛,出血,硬結等)
疲労
出典元:スキリージ添付文書
上咽頭炎(4.2%)、咽頭炎(1.8%)の他、上気道感染(ウィルス性含む)が約5%以下で出現しています。
副作用の出現は少なく、基本的には咽頭炎や上気道感染に注意しましょう。
重症な副作用としては、重症感染症(敗血症,骨髄炎,腎盂腎炎,細菌性髄膜炎等)、過敏症があげられるため、こちらの副作用も念頭に置く必要があります。
まとめ
ヒトのサイトカインであるインターロイキン(IL)-23のp19サブユニットに結合することで、阻害作用を示すスキリージ注(リサンキズマブ)について説明させていただきました。
リサンキズマブの作用点については難しいため、作成した図や公式サイトを参考に理解を深めてください。
スキリージ注(リサンキズマブ)についての説明は以上となります。
上記内容はばーくん(BA-KUN )の個人的見解であり、利益相反等も一切ございません。薬剤の使用については、必ず添付文書やインタビューフォームを読んで使用してください。治療により受けた不利益の責任はおいかねます。
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