2019年9月20日に製造販売承認の取得、2019年11月20日発売となりました。
新たな作用機序であるエベレンゾ錠(ロキサデュスタット)について、添付文書とインタビューフォームを中心に、病院薬剤師目線から説明します。
こんな方におすすめ
- 新薬である「エベレンゾ錠(ロキサデュスタット)」の作用機序・特徴が知りたい
- HIF-PH阻害薬ってなに?
- 服用方法・飲み忘れた時はどうしたらいいか
- 主な副作用について、理由は?
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医薬品情報(基本項目)
販売名 | エベレンゾ錠20mg/50mg/100mg |
名前の由来 | EVRENZO = Everest(エベレスト)+enzyme inhibitor(酵素阻害薬) |
一般名 | ロキサデュスタット (洋名::Roxadustat) |
製造販売元 | アステラス製薬株式会社 (提携:FibroGen社) |
薬効分類 | HIF-PH阻害薬 腎性貧血治療薬 |
効能・効果 | 透析施行中の腎性貧血 |
用法・用量 | 赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合 赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合 |
薬価 | 20mg 387.40円/錠 50mg 819.20円/錠 100mg 1443.50円/錠 (2019年12月1日現在) |
問い合わせ窓口 | アステラス製薬株式会社 メディカルインフォメーションセンター TEL 0120-189-371 https://amn.astellas.jp/ |
エベレンゾ錠(ロキサデュスタット)の作用機序【新機序: HIF-PH阻害薬 】
事前知識として、高地トレーニングから【低酸素下の効果】
詳しい説明の前に、より分かりやすくするための説明をさせていただきます。
(知っているという方はこちらからとばせます)
マラソン・水泳選手などのアスリートが大会前に行っている「高地トレーニング」とはご存じでしょうか?
高地トレーニングとは?
高地トレーニングは、人間の環境への適応能力を活かし、運動能力向上につなげるトレーニング方法です。
高地とは、低圧、低酸素、低温の環境のことで、効果的な標高は1500~3000mとされています。
高地では酸素濃度が薄いため人間の体は酸素を取り込みにくくなり、血中の酸素濃度が低下します。
体は環境に適応した酸素濃度を確保するために、体内で赤血球数やヘモグロビン濃度を増加させます。
このような体の適応能力を活かして身体能力、特に赤血球数やヘモグロビン濃度を増加させることで、肺活量を高め、平地でのパフォーマンスを高めます。
長くなりましたが、エベレンゾ錠(ロキサデュスタット)は、服用することで、体を低濃度環境に置いた状態にします。。
HIF-PH阻害薬
ロキサデュスタットは、転写因子である低酸素誘導因子(HIF:hypoxia inducible factor)の分解に関わるHIF-プロリン水酸化酵素(HIF-PH)を阻害する。それにより、HIF-α の分解が妨げられて HIF 経路が活性化され、その結果、エリスロポエチン(EPO)が増加することにより、赤血球形成が促進されると考えられる。
出典元:インタビューフォーム
このように、低酸素誘導因子の分解が阻害されることで、低酸素下であると体が勘違いをし、赤血球増加が促進されます。
エベレンゾ錠(ロキサデュスタット)発売によるメリット
現在、ネスプ®(ダルベポエチンアルファ)による注射製剤が、腎性貧血に使われています。
しかし、HD 患者へは静脈内投与のため、医療スタッフの投与時の針刺し事故や感染リスクが問題となっています。
さらに、PD患者への皮下投与は、投与時の疼痛や頻回投与による通院負担大きいものとなります。
しかし、エベレンゾ錠(ロキサデュスタット)の開発により、内服で貧血の治療が出来るため、上記の有害事象の軽減、通院負担の軽度な減少が期待できます。
用法・用量【週3回(月・水・金、または火・木・土)】
7.3用法及び用量
2~3日に1回の間隔(例えば月・水・金、又は火・木・土等)で週3回投与すること。
出典元:添付文書
食前・食後・空腹時でいつ飲めば良いのか?
※更新予定です。
インタビューフォームでは(上記図)、健康男性被験者(16 例)に本剤 100 mgを空腹時及び食後に単回経口投与したとき、最小 2 乗幾何平均値の比(食後投与/空腹時投与)は、AUClast で 94.11%(90%CI:89.67%、98.78%)、AUCinf で 94.44%(90%CI:89.93%、99.18%)及び Cmax で 79.88%(90%CI:72.09%、88.52%)であった。食事により、Cmax が約 20%低下したが、AUC の低下はわずかであったとの事です。
これより、出来るのであれば空腹時の方が良いのかと思いますが、忘れるよりは食後投与で飲み忘れなくした方が良いのかなと思います。
透析で、抜けないため、個人的には、朝食後内服⇒透析の際医療者が服用についてチェック⇒忘れていたら服用、という流れでいいのかなと思います。
服用忘れの時【次の服用まで24時間以上あればすぐ服用!】
7.4 本剤の服用を忘れた場合
次のあらかじめ定めた日の服用時間帯と24時間以上間隔があく場合は、直ちに服用すること。ただし、以後はあらかじめ定めた日に服用すること。次のあらかじめ定めた日の服用時間帯との間隔が24時間未満である場合は服用せずに、次のあらかじめ定めた日に服用すること。同日に2回分を服用しないこと。
出典元:添付文書
通常の用法は、2~3日に1回の間隔(例えば月・水・金、又は火・木・土等)で週3回投与することとされています。
忘れた場合に、次の服用まで24時間以上空いていればすぐ服用するようにとされています。
※因みに、透析で本剤は抜けません(IFより)
例えば、月水金の9時に飲むとします
すぐ飲む時
⇒月曜日の21時に服用忘れに気づいた。次の服用まで、36時間です。
飛ばす時
⇒火曜日の12時に服用忘れに気づいた。次の服用まで、21時間です。
警告!【ダルベポエチンアルファとの比較も記載】
1.警告
本剤投与中に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の重篤な血栓塞栓症があらわれ、死亡に至るおそれがある。本剤の投与開始前に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の合併症及び既往歴の有無等を含めた血栓塞栓症のリスクを評価した上で、本剤の投与の可否を慎重に判断すること。また、本剤投与中は、患者の状態を十分に観察し、血栓塞栓症が疑われる徴候や症状の発現に注意すること。血栓塞栓症が疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。
出典元:添付文書
理由としては、血液透析患者対象の国内第Ⅲ相試験のデータからです。
エベレンゾ錠(ロキサデュスタット)群では、ダルベポエチンアルファ(ネスプ®)群と比較して血栓塞栓症関連事象の発現割合が高い傾向が認められました。
ロキサデュスタット群 11.3%、ダルベポエチンアルファ群 3.9%
重篤な血栓塞栓症関連事象の発現割合についても
ロキサデュスタット群 8.2%、ダルベポエチンアルファ群 2.6%
以上より、禁忌に設定されています。
血栓塞栓症の頻度:エベレンゾ vs ダルベポエチンアルファ
■血栓塞栓症関連事象の発現割合
ロキサデュスタット群 11.3%
ダルベポエチンアルファ群 3.9%
■重篤な血栓塞栓症関連事象の発現割合についても
ロキサデュスタット群 8.2%
ダルベポエチンアルファ群 2.6%
※ダルベポエチンアルファ(商品名:ネスプ)。上記試験は、先発品で比較しているかは不明
副作用
頻度の高い部分と重篤なものをピックアップしました。
●重大な副作用
血栓塞栓症(3.4%)
⇒脳梗塞(0.7%)、急性心筋梗塞(0.2%)、シャント閉塞(1.6%)、医療機器内血栓(0.5%)、ラクナ梗塞(0.1%)、深部静脈血栓症(0.2%)が認められています。(IFより)
原因は、ヘモグロビンが増えることで、血栓塞栓症が発生します。
●頻度高めな副作用
目立って高い5%を超える副作用は、特にありませんでした。胃腸障害の分類を合わせても約9%です。逆に幅広い副作用がありました。
総コレステロール及び LDL コレステロールが減少 【臨床検査結果に及ぼす影響】
総コレステロール、LDLコレステロールが低下することがあるようです。
理由としては、HMG-CoA 還元酵素(HMGCR)酵素活性を直接的に阻害しないものの、HIF 依存的に細胞内のHMGCR蛋白濃度を減少させることによりコレステロール生合成が抑制され、コレステロール低下作用を示すことが考えられる。
脂質異常症の治療を受けている患者には、情報提供が必要です。
あとがき
HIF-PH阻害薬という新たな作用機序であるエベレンゾ錠(ロキサデュスタット)について、個人的な観点からまとめさせていただきました。
エベレンゾ錠(ロキサデュスタット)についての説明は以上となります。
上記内容はばーくん(BA-KUN )の個人的見解であり、利益相反等も一切ございません。薬剤の使用については、必ず添付文書やインタビューフォームを読んで使用してください。治療により受けた不利益の責任はおいかねます。
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