2019年6月18日に製造販売承認を取得しました。
現役病院薬剤師であるばーくんが、ロナセン錠・散の経皮吸収型製剤となるロナセンテープについて説明します。
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医薬品情報(基本項目)
販売名 | ロナセンテープ |
名前の由来 | 「Blonanserin」より「lonasen」 |
一般名 | ブロナンセリン(洋名:Blonanserin) |
製造販売元 | 大日本住友製薬株式会社 |
薬効分類 | 抗精神病剤 |
効能・効果 | 統合失調症 |
用法・用量 | 通常、成人にはブロナンセリンとして40mgを1日1回貼付。患者の状態に応じて最大80mgを1日1回貼付可能。 患者の状態により適宜増減するが、1日量は80mgを超えないこと。 本剤は、胸部、腹部、背部のいずれかに貼付し、24時間毎に貼り替え。 |
薬価 | 200㎎:278.4円/枚 300㎎:401.3円/枚 400㎎:520.2円/枚 |
出典元:添付文書
統合失調症とは?
統合失調症は、青年期に好発し、約120人に1人が罹患します。
幻覚、妄想、会話や行動の解体などの陽性症状と、感情鈍麻、自発性減退などの陰性症状を示します。
原因は、不明な点が多いですが、遺伝的素因や環境要因による軽微な神経発達障害が発症脆弱性を形成し(神経発達障害仮説)、さまざまなストレスの作用によりドーパミン伝達過剰などの脳機の変調が生じて症状が発現すると考えられています。(脆弱性ストレスモデル)
統合失調症の薬物治療の基本
①単剤で経口投与する。
②有効かつ最小量でコントロールする
③各薬剤の有効性・副作用を考慮して選択する
経皮吸収型製剤開発の背景・メリット
ロナセン®(ブロナンセリン)を経皮吸収型製剤にすることで得られる主な利点は4つあります。
①用法が 1 日 1 回貼付になる:コンプライアンスの改善
②時間経過に伴う血漿中ブロナンセリン濃度の変動が経口剤より小さくなる:安定性向上
③小腸及び肝臓での初回通過効果を受けないことから、消化管における CYP3A4の阻害や誘導作用を持つ薬剤等との併用による相互作用を受けにくくなる:安定性の向上
④患者が医療スタッフと治療方針について意思決定する共同作業(Shared Decision Making)において選べる剤型の選択肢が増え、患者のアドヒアランス向上につながる
このように抗精神病薬として初めての経皮吸収型製剤となることで、コンプライアンス・アドヒアランスの向上、薬剤の安定性の向上が期待できます。
・コンプライアンス(アドヒアランス)の向上
ロナセンテープ(ブロナンセリン)の作用機序【医療者向け】
・完全拮抗作用
①ドパミンD2受容体サブファミリー(D2、D3)
②セロトニン5-HT2A受容体
・低い親和性
アドレナリンα1
ヒスタミンH1
ムスカリンM1、M3
経口製剤から経皮吸収型製剤( 貼付剤 )への切り替え
ブロナンセリン経口製剤から本剤へ切り替える場合には、次の投与予定時刻に切り替え可能であるが、患者の状態を十分観察すること。切り替えに際しては、「臨床成績」の項を参考に用量を選択すること。
本剤からブロナンセリン経口製剤へ切り替える場合には、ブロナンセリン経口製剤の用法・用量に従って、1 回 4mg、1 日 2 回食後経口投与より開始し、徐々に増量すること。
なお、ブロナンセリン経口製剤と本剤を同時期に投与することにより過量投与にならないよう注意すること。出典元:ロナセンテープ インタビューフォーム
内服薬(経口剤)と貼付剤(経皮吸収型製剤)の用量換算
2. 国内第3相長期投与試験
治療継続率(95%信頼区間)は、ロナセン錠単剤6週間投与後に本剤を52週間貼付したコホートの28週で64.9%(54.6〜73.5)、52週で58.8%(48.3〜67.8)、すぐに本剤を52週間貼付したコホートの28週で66.0%(56.0〜74.3)、52週で57.3%(47.2〜66.2)であった。
なお、ロナセン錠単剤6週間投与後に本剤貼付を開始したコホートでは、下表に示す用量でロナセン錠から本剤へ切り替えた。(表9参照)表9
ロナセン錠最終投与量 本剤開始貼付量 8mg/日 40mg/日 12mg/日 60mg/日 16mg/日 80mg/日 出典元:ロナセンテープ 添付文書より抜粋
探索的試験:①PET試験(第2相)において、用量の同等性試験がされています。
①PET 試験(第 2 相)
統合失調症患者を対象に、本剤を 2 週間反復貼付したときの線条体ドパミン D2受容体占有率をpositron emission tomography(PET)により検討した[ランダム化(80mg/日群除く)、非盲検、無対照]。ロナセン錠 8 又は 16mg/日(同意取得前に服薬していたロナセン錠と同一用量)を 1 日 2 回 2
週間(最長 4 週間)経口投与後、本剤 10、20、40、60 又は 80mg(1~4 枚)/日を 1 日 1 回 2 週間(最長 4 週間)上背部又は胸部に貼付した。ロナセン錠投与開始 2 週間後及び本剤貼付開始 2 週間後にPET スキャンを実施し、線条体ドパミン D2受容体占有率を算出した。ロナセン錠の投与を開始した
18 例のうち 16 例が本剤貼付に移行し 14 例が貼付を完了した。線条体ドパミン D2受容体占有率は血漿中ブロナンセリン濃度に応じて高くなり、本剤貼付時には血漿中ブロナンセリン濃度が約 2ng/mLを超えると 60~80%の占有率を示した。
上述した PET 試験の結果を用いて推定したロナセン錠 8 又は 16mg/日投与時定常状態での個別推定占有率の多くが本剤 40 及び 80mg/日貼付時定常状態で推定される占有率の 90%予測区間に含まれたことから、ロナセン錠 8 又は 16mg/日と同程度の占有率を示す本剤の貼付量は 40mg 又は 80mg/日と推
定された。出典元:ロナセンインタビューフォーム
・経口と貼付剤の双方の変更が可能
・1日あたり、ロナセン錠8㎎/日=ロナセンテープ40㎎/日が同用量(※IF試験より)
相互作用
ロナセンテープは、経口剤と同様に肝代謝薬(CYP3A4)であるが、貼付剤であることから初回通過効果を受けない。そのため、ブロナンセリン経口剤の投与時に比べ、CYP3A4阻害剤・誘導剤併用時の薬物動態への影響は小さいと考えられる。
しかし、比較すると影響が小さいだけであり、添付文書にも禁忌や相互作用の注意事項が明記されている。
よくある質問
テープはハサミで切っていいか?
答えは、「No」です。
→添付文書の使用上の注意の箇所に「本剤はハサミ等で切って使用しないこと」とされています。
まとめ
統合失調症治療薬であるロナセンテープ(ブロナンセリン)について解説説明しました。
経皮吸収型製剤の追加により、薬剤の安定性が向上し、患者さんにも選択肢が出来ました。コンプライアンスが重要となってくる疾患ですので、貼付剤の追加によるメリットは大きいと思います。
経口剤から貼付剤への切り替えについては、換算を確認し過量投与にならないように注意しなければなりません。
また、経皮吸収型製剤となり皮膚障害の対策を行う必要が出てきます。
ロナセンテープ(ブロナンセリン)について説明は以上となります。
上記内容はばーくん(BA-KUN )の個人的見解であり、利益相反等も一切ございません。薬剤の使用については、必ず添付文書やインタビューフォームを読んで使用してください。治療により受けた不利益の責任はおいかねます。
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